初乳って大事ですよね!

専門/技術

前回は、預託されている子牛の中で、免疫が低い子牛が増えてきていますよ、というお話でした。今回は適切な初乳の給与について、掘り下げていきたいと思います。筆者もまだまだ勉強中の身ですので、そんなもん知っとるがな、という方も、筆者にツッコミを入れてやる気持ちで見ていただけたらと思います(つっこまれないよう頑張ります)。

 

☆初乳の成分とは?

初乳には、免疫グロブリンと免疫細胞が含まれていて、これらの細胞は子牛の体内で5週間は生存し、子牛の未熟な免疫細胞に変わって免疫応答をします。また、これら免疫細胞が消失した後も免疫記憶は残り、2次応答に役立ちます。このほか、免疫サポート物質も含まれており、免疫グロブリンを壊さないはたらきや抗細菌作用で免疫をサポートしてくれます。

つまり、良質な初乳とは、第一に上記の成分が十分含まれているものであり、そのためには乾乳期の飼養管理が重要です。前回も触れましたが、母牛の栄養不足は初乳成分を低下させます。また、初乳成分は漏乳により低下し、乳房内でも時間経過により低下するので、分娩後最初に搾乳したものが好ましいでしょう。

 

☆初乳を飲ませるタイミングとは?

生まれてから初乳給与までの時間については、6時間を過ぎると急激に吸収率が低下することが知られています。最近では、生後2時間以内に2~3ℓ、生後6時間以内にもう1度2~3ℓ飲ませると良い、とされています。難しい面もあるかと思いますが、免疫状態の良い子牛が多い農場では、やはり生後6時間以内にしっかりと初乳を飲ませている印象が強いです。

ちなみに、出生子牛の第4胃内には2~3ℓの羊水が含まれています。子牛が起立することで、この羊水が小腸へ移動し、第4胃内が空になることで哺乳欲を示します。4胃の中に羊水が残っている状態で初乳を強制投与しても、初乳が凝固不十分となり、結果的に免疫グロブリンが吸収されなくなってしまいます。通常、出生子牛は2時間以内に起立するとされるので、長時間(6時間が目安だそうです!)経過しても起立しない場合は注意が必要です。

結局のところ、自然分娩や通常の介助分娩(1人程度)で生まれ、2時間以内に起立した子牛は、哺乳欲を示した時が初乳給与のベストタイミング、ということになります。作業等の兼ね合いもあり、難しい場合もあるかと思いますが(朝行ったら生まれてた、というのはありますよね!)、生後6時間以内に1度2~3ℓを与える、という点を守れるかどうかでかなり変わってくるのではないかと思います。

 

☆初乳の質

初乳の質ですが、簡易的にBrix値を測定することができます。それがこちらの糖度計です。ご自身で糖度計を用いて測定している方もいらっしゃるのではないでしょうか。

この糖度計で22以上あれば、初乳の質としては良好かと思います。また、これで数値が低い場合には、初乳製剤を少し混ぜて底上げを図る、一定以上の数値が出たものは冷凍保存しておく、など工夫している農場もみられますね。ただし、初乳の質が良くても、飲ませるタイミングが良くなければもったいないですから、初乳の質、飲ませるタイミング、どちらも大切にしていただきたいです。

そして、基本的には初乳≧冷凍初乳>初乳製剤ということをお忘れなく!初乳製剤のみ飲ませた子牛は、初乳を飲ませた子牛に比べて免疫の数値も低いことが多いです(あとかなりお金かかりますね!)。 ちなみに、初乳の色と質は関係ありません!色が濃いから免疫グロブリンが多い、というわけではないので、ご注意を!

長々と話してしまいましたが、ここで一区切りにしたいと思います。やはり免疫というのはとても重要で、お預かりしている子牛の中でも、免疫の良し悪しで下痢の程度が大きく違うことが多いです、もちろん何事にも例外は存在しますが。

さて、ここでお知らせがあります。これまで週2回の更新を続けてきましたが、次回からは週1回の更新にしていきたいと思います。次回は5月10日(金)の更新、内容は牛舎の踏込槽についてです!それでは皆様、よいゴールデンウイークを!

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