子牛の移行免疫が……

専門/技術

前回の記事で触れましたが、今回は少し重要な話題です。センターでは、子牛を導入した際に、獣医師により採血を行い、子牛の移行免疫状態を測定しています。子牛が初乳をきちんと飲めているか、移行免疫が十分かわかるわけです。検査の内容と判定は以下の通りです。

評価総蛋白量(g/dL)血清Brix値(%)
6.2以上9.4以上
5.8以上 6.2未満8.9以上 9.4未満
5.1以上 5.8未満8.1以上 8.9未満
5.1未満8.1未満

出典ですが、『Journal of Dairy Science』に記載されているものを少し改変したものになります。ネットでも閲覧できるようですので、URLを貼っておきますね。ちなみにどこを改変したかというと、「Excellent」や「Good」を「優」や「良」に変えただけです。大学の成績みたいですね。

ScienceDirect

なぜこの2つを測定するのかといいますと、血清中の免疫グロブリン(IgG)濃度は上記2つの濃度と相関があることがわかっているからです。つまるところ、上記の判定が良ければ、IgG濃度も良いだろう、と。血清中の総蛋白量やBrix値が測定できれば、IgGの状態を簡易的に推定できるわけですね。

さて、実際にどれくらいの数値が出せれば良いのか?というところですが、我々としましては、上記の評価で「良」以上(蛋白で5.8、Brixで8.9以上)が理想と考えています。

……というところで、今回の本題に入りましょう。哺育育成センターが2022年10月に稼働を開始し、およそ1年半が経過しました。たくさんの子牛の免疫状態を調べていく中で、以前に比べて免疫の数値が落ちてきていることがわかったのです。これまでの各月ごとの平均値の推移を表とグラフにしましたので、ご覧ください。

繰り返しになりますが、TPは5.8、Brixは8.9以上が理想です(TPは総蛋白量を意味しています)。

こうして見るとはっきりとわかるのではないでしょうか。去年(R5)の8月から、明らかに数値が低くなり、そのままあまり変わらずに推移しています。去年の夏は暑かったので、母牛があまり餌を食べず、栄養状態が悪くなったことで、初乳の質が下がったのではないかと推測しています。

また、もう1つ考えられる原因として、飼料等の価格高騰により、餌の給与量を切り詰めざるを得ない農場もあるのでは?という点です。どちらにせよ、母牛の栄養状態の悪化が初乳の質の低下を招いているのでは?という推測になります。どちらも難しい課題ですが、これからも引き続き適切な初乳の給与をお願いいたします。

で、適切な初乳の給与って?……というところで、次回へ続きます。生産者の方は「もう知ってるよ!」とお思いかと思いますが、せっかくですので次回も見ていただけると嬉しいです!

それではまた次回、お会いしましょう!更新は4月30日を予定しています!

またみてね!

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